健康と年金出版社

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健保・年金相談室

社会保険労務士の方や各団体の相談員、専門家の方は、日頃、多方面から種々の質問を受けています。ここでは健保組合、共済組合、協会けんぽの職員の方、年金実務に携わる方が業務の参考になる事例を取り上げ、わかりやすく解説していきます。

2021.9.22UP

新型コロナウイルス感染症の影響により、収入源となる業務の喪失や売り上げの減少などにより所得が相当程度下がった場合を理由とした国民年金保険料免除・納付猶予の臨時特例の申請手続きが、令和3年度(令和3年7月~令和4年6月)も延長されています。

この臨時特例による国民年金保険料の免除・猶予申請は、以下の2点のいずれも満たした方が対象になります。

  1. 令和2年2月以降に、新型コロナウイルス感染症の影響により収入が減少したこと
  2. 令和2年2月以降の所得等の状況から見て、当年中の所得の見込みが、現行の国民年金保険料の免除等に該当する水準になることが見込まれること

臨時特例による免除の申請に必要な書類は次の2つの書類(年金機構のHPから取得可能)となりますが、免除の申請する期間によって、「所得申立書」の年度が異なるので年金事務所に確認しましょう。

免除の申請書は、住民登録をしている市(区)役所・町村役場または年金事務所へ郵送します。

  1. 国民年金保険料免除・納付猶予申請書(日本年金機構のホームページ)
  2. 所得の申立書(日本年金機構のホームページ)

なお、免除、納付猶予の承認を受けた時は、保険料を納付した場合と比べて将来の老齢年金額が低くなります。免除等の承認から10年以内であれば、追納することも可能です。

2021.9.15UP

障害年金の請求は、請求者本人の死亡後、一定の条件を満たせば、遺族の方が「障害年金の未支給」として請求できる場合があり、原則、通常の障害年金請求と同様に次の3つの要件を満たしていることが必要です。

  1. 障害の原因となった病気やケガの初診日においての国民年金・厚生年金等に加入している要件(20歳前や、60歳以上65歳未満(年金制度に加入していない期間)で、日本国内に住んでいる間に初診日があるときも含みます。)
  2. 初診日の前日において、初診日のある月の前々月までの公的年金の加入期間の2/3以上の期間について、保険料が納付または免除されていること。もしくは、初診日において65歳未満であり、初診日のある月の前々月までの1年間に保険料の未納がないこと等保険料の納付・免除している要件
  3. 障害認定日(事後重症の場合は請求日)において一定の障害の状態にある要件

異なる点は、本人が死亡した後の請求は、「事後重症請求」ができず、「認定日請求」でなければならないことです。認定日に障害等級に該当した場合に、障害認定日の属する月の翌月から本人が死亡した月までの障害年金が、未支給年金として遺族に支給されます。

日本年金機構への手続きは、障害年金請求書と未支給年金請求書に必要書類を添えて同時に提出しますが、認定日の診断書を提出できるか、またそれが障害等級に該当するかが一番のポイントになります。

認定日とは、初診日から1年半もしくはそれ以内に症状が固定した日ですが、死亡した方が、認定日から3ヶ月以内にその傷病で医療機関を受診していていることが必要です。受診していれば、医師に認定日から3か月以内の日での診断書を依頼します。ただ、受診していても、診断書に必要な検査・計測のデータ不足や、心電図やレントゲンの添付が不可など、診断書の記載内容が不備だと障害状態の審査ができません。また、認定日が5年以上遡及となると、カルテが処分されていたり、医療機関自体が廃院していたりで、診断書の提出すらできず、請求自体もできません。

未支給請求できる遺族は、生計同一関係にある配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹、その他①~⑥以外の三親等内の親族となり、未支給の請求の時効は、死亡から5年です。なお、死亡した方が2級以上の障害厚生年金受給者と認定され、一定の条件を満たす遺族がいれば、遺族厚生年金(短期要件)が支給される場合もあるので、詳細は、年金事務所に相談することを勧めます。

(ひるた・よしこ:社会保険労務士、FP技能士2級、DCプランナー2級、年金アドバイザー2級、 2009年12月、東京社会保険事務局を退職。街角の年金相談センターの相談員として年金相談業務に従事する傍ら、わかりやすい年金の事務手続き等のセミナーや専門誌等への執筆活動を行っている。)

2021.8.26UP

健康保険法等における傷病手当金の扱いについて

新型コロナウイルスに感染し、その療養のため労務に服することができない方については、他の疾病にかかっている場合と同様に、健康保険や共済組合に加入されている方であれば、療養のために3日間連続して仕事を休み、4日目以降にも休んだ日があり、給与等の支払いを受けられないか、一部減額されて支払われている場合に傷病手当金が支給されます。

支給額は、直近12カ月の平均の標準報酬日額の3分の2に相当する金額が支給されます。なお、労務に服することができなかった期間には、発熱などの症状があるため自宅療養を行った期間も含まれます。また、やむを得ず医療機関を受診できず、医師の意見書がない場合においても、事業主の証明書により、医療保険者において労務不能と認められる場合(被保険者には自覚症状はないものの、検査の結果、「新型コロナウイルス陽性」 と判定され療養のため労務に服することができない場合等)があります。

また、国民健康保険(国保組合加入者を含む)に加入している方については、市区町村又は国保組合によっては、条例(国保組合の場合は組合規約)により、新型コロナウイルスに感染した被保険者に傷病手当金を支給する場合があります。具体的な申請手続き等の詳細については、加入する医療保険者(市区町村、国保組合)にご確認ください。

また、医療従事者の方などが業務に起因して感染したものであると認められる場合には、労災保険給付の対象となります。新型コロナウイルス感染症による症状が継続し、療養や休業が必要と認められる場合にも、労災保険給付の対象となります。請求の手続等については、事業場を管轄する労働基準監督署にご相談ください。

令和2年3月6日 厚生労働省通知参照

(ひろべ・まさよし:元健康保険組合常務理事。現在は健保連神奈川連合会、柔道整復療養費相談会・相談員)

2021.8.2UP

第三者行為とは、他者の故意や過失によって引き起こされた行為のことを言い、交通事故による傷病が最も多く、労災事故、電車や船舶の事故、他者から受けた暴行等が原因の場合などがあります。これら、第三者行為による傷病で障害年金を受給した場合、第三者(事故の加害者)からの賠償金と国の年金と二重の補償を受けることになるため、障害年金を一時支給停止にする調整が行われます。

支給停止期間

支給停止期間は、受け取った賠償金を基に、「休業損害」や「逸失利益」等の生活保障に相当する部分のみで計算され、治療費などの実出費や慰謝料などは支給調整の対象にはなりません。また、停止期間は、事故が発生した日から最長でも36ヶ月間です。なお、平成27年9月30日以前に発生した事故の場合の支給停止期間は24ヶ月になります。

第三者行為届と必要な書類

所定様式(年金事務所から取り寄せます)

  • 第三者行為事故状況届
  • 確認書 賠償金を受けた場合、年金が停止となることを了承している
  • 同意書 日本年金機構が保険会社等から直接情報を受けることの同意

添付する書類 例(事故のケースにより異なります)

  • 交通事故証明(自動車安全運転センターに申請。事故が起こった日 から5年以内でないと取得できません)
  • 被扶養者がいる場合
    扶養していたことを証明する源泉徴収票、健康保険証や学生証の写しなど
  • 損害賠償金の算定書、示談書等、受領金額がわかるもの
  • 示談書(写)

なお、第三者行為は、労災なら、労働基準監督署へ、医療保険なら加入している制度(協会けんぽ、健康保険組合、国民健康保険等)へもそれぞれ手続きが必要となるので、詳細は、担当部署に確認しましょう。

(ひるた・よしこ:社会保険労務士、FP技能士2級、DCプランナー2級、年金アドバイザー2級、 2009年12月、東京社会保険事務局を退職。街角の年金相談センターの相談員として年金相談業務に従事する傍ら、わかりやすい年金の事務手続き等のセミナーや専門誌等への執筆活動を行っている。)

2021.7.15UP

手足の切断や失明、人工関節の挿入置換のように障害状態が固定された場合、永久固定と認定され、障害状態確認届(診断書)の提出はありません。ただし、障害の程度が悪くなった場合、自ら「額改定請求」を提出する必要があります。

これに対し、有期認定は、1年から5年以内の期間(更新期間)の範囲で、障害の程度の再確認のため、障害状態確認届(診断書)の提出が求められています。

人工透析をしている場合は、原則、有期認定となりますが、合併症がなく、症状が安定している場合は、有期5年となり、また、70歳以上の受給者の場合は、永久固定になります。

令和元年8月以降、20歳前傷病の障害年金の受給者も、障害状態確認届(診断書)の送付が、誕生月の3か月前の月末となり、誕生月の末日までの現症日で提出するように変わりました。

障害状態確認届でチェックポイント

(1)診断書の種類と枚数は一致していますか?

脳血管疾患の傷病で障害年金を肢体麻痺と高次脳機能障害で認定された場合、障害状態確認届(診断書)は、肢体と精神の2種類の診断書が必要です。

(2)障害状態確認届の現症日は、指定日のものですか?

誕生月の3か月前から誕生月の末日までの現症日であるか確認が必要です。

障害状態確認届(診断書)の審査で等級が下がる場合

(1)障害認定基準の改正があった場合

改正後の障害認定基準に基づいて審査されるため、障害の程度が障害等級に該当しなくなることがあり得ます。

(2)就労していて障害の程度が軽くなったと認定された場合

精神の診断書には、就労状況を記入する欄があり、就労していれば障害が軽くなったと判断されることがあります。

医師に記入を依頼する際に、障害者雇用枠であり、周りの人からの支援の内容など就労の形態や状況を詳しく書いてもらうようにします。

障害状態確認届(診断書)に額改定請求書を同時に提出する場合

障害給付額改定請求書」を付けない場合は、更新時に等級が上がらなくても不服申立てをすることができません。不服があったときは、改めて「障害給付額改定請求書」に診断書を添えて請求する必要があります。 「障害給付額改定請求書」を付けた場合は、「障害給付額改定請求書」に対しての決定事項である、「等級が改定されなかった」ことに不服申立て(審査請求)をすることができます。

(ひるた・よしこ:社会保険労務士、FP技能士2級、DCプランナー2級、年金アドバイザー2級、 2009年12月、東京社会保険事務局を退職。街角の年金相談センターの相談員として年金相談業務に従事する傍ら、わかりやすい年金の事務手続き等のセミナーや専門誌等への執筆活動を行っている。)

2021.7.1UP

障害の程度を認定する基準は、国年令別表、厚年令別表第1及び別表第2に加え、「障害等級認定基準」に定めるところによるものとされています。また、これらに、明示されていない障害については、医学的検査結果等に基づき判断し、最も近似している認定基準の障害の程度に相当するものを準用して行うこととされています。具体的な事例として、4つの傷病(繊維筋痛症、慢性疲労症候群、化学物質過敏症、脳脊髄液漏出症)の診断書が「認定困難事例」として年金機構のホームページに掲載されています。

『線維筋痛症』

線維筋痛症とは、原因不明であらゆる検査でもほとんど異常が認められず、全身の疼痛を主症状とし、精神神経症状(不安やうつ病など)、自律神経の症状(過敏性腸症候群)を副症状とする疾患で、長時間に渡る疼痛のためQOL(生活の質)が著しく低下します。「線維筋痛症の重症度分類試案」(厚生労働省研究班)により、ステージ1~ステージ5に分類されているので、肢体の診断書には、このステージ数の記載が必要です。

『慢性疲労症候群』

慢性疲労症候群とは、原因不明の全身倦怠感が急激に始まり、十分な休養をとっても回復せず,長期にわたり疲労を中心に微熱、のどの痛み、リンパ節のはれ、筋力低下、頭痛、精神神経症状などが続き、日常生活に支障をきたす疾患です。慢性疲労症候群は旧厚生省研究班の重症度分類でPS O~PS 9に分類されているので、肢体の診断書には、この重症度分類が記載が必要です。

*PS=Performance status(パフォーマンス・ステータス)

『化学物質過敏症』

化学物資過敏症は、化学物質の暴露(ばくろ)が個人の許容量を超えると、その後も原因となる化学物質の微量暴露であっても免疫障害、自律神経障害、精神障害、臓器障害などのアレルギー疾患または中毒的な多種類の体調変化をきたし、化学物質に対して過敏状態となる疾患です。化学物資過敏症は、診断書以外に「障害年金の請求にかかる照会について」(所定の用紙)を医師に記入してもらい提出します。

『脳脊髄液減少症(脳脊髄液漏出症)』

「脳脊髄液減少症(脳脊髄液漏出症)」とは、交通事故や転倒など頭部への強い衝撃で脳や髄液を覆う硬膜に穴があき、脳脊髄液(髄液)が持続的ないし断続的に漏出することによって、脳脊髄液が減少し、頭痛、頸部痛、めまい、耳鳴り、視機能障害、倦怠・易疲労感などを引き起こすと考えられている疾患です。請求者の症状が正しく反映されるように、「その他診断書」「肢体の診断書」のいずれの診断書でも提出可能ということになっています。

以上、明示されていない障害についても認定されていますが、以前から 違法薬物の使用によって生じた障害であると医学的に認められた場合は、国年法70条、厚年法73条の2より、障害年金の全部または一部が給付制限となっていました。今般、今までの認定事例に基づいて、令和3年3月4日、年管管発0304第6号 厚生労働省年金局の通知で「給付制限の取り扱い」が整理されました。

(ひるた・よしこ:社会保険労務士、FP技能士2級、DCプランナー2級、年金アドバイザー2級、 2009年12月、東京社会保険事務局を退職。街角の年金相談センターの相談員として年金相談業務に従事する傍ら、わかりやすい年金の事務手続き等のセミナーや専門誌等への執筆活動を行っている。)

2021.6.1UP

健康保険の資格を取得した日から傷病手当金や出産手当金の請求が来たら担当者はびっくりするでしょう。誰も病気や出産休業中の人を雇用する人はいないからだ。

実は、健康保険組合が解散し協会けんぽに移ったり、適用事業所が一括適用になったりすることで、健康保険の記号番号が変わる場合がよくあるが、次のように共済組合員への移行もあるのだ。

国家公務員や地方公務員の場合は、いわゆる正規職員は共済組合員となるが、非常勤職員(短時間勤務のアルバイト等)は、協会けんぽの被保険者【注1】となる。しかし、12カ月以上勤務する常勤的な臨時職員は、政令によって正規職員と同様にみなされ共済組合員となる。一年以上勤務した時点から共済組合員になるわけだ。

健康保険法には共済組合に関する特例【注2】があり、元の保険者である協会けんぽが資格喪失後の給付として支給するのではなく、共済組合が資格取得日から出産手当金を支給すべきと解釈できる。実際にあった事例では、協会けんぽが紳士的な対応で被保険者期間が1年以上あるので資格喪失後の給付として支給することを表明したが、腑に落ちないのは関西地方にある共済組合側の対応で、これは法律の盲点だと云って支給を拒否したらしい。法令に基づき保険者が移動しただけで、逆選択でも何でもない。健康保険組合が解散し協会けんぽに移った後で、直ちに被保険者から出産や傷病手当金の請求があっても時効でない限り協会けんぽが支給している。健年タイムス第12号でも述べた通り、無慈悲な保険担当者が誤解しないためにも医療保険制度間の調整は法律で明確にすべきだ。

【注1】令和4年10月1日から短時間勤務者も短期給付の共済組合員となる。

【注2】共済組合に関する特例(健康保険法第二百条)国に使用される被保険者、地方公共団体の事務所に使用される被保険者又は法人に使用される被保険者であって共済組合の組合員であるものに対しては、この法律による保険給付は、行わない。

(ひろべ・まさよし:元健康保険組合常務理事。現在は健保連神奈川連合会、柔道整復療養費相談会・相談員)

2021.5.1UP

日本年金機構での障害年金の請求では、障害の原因となる傷病の初診日を特定するために、診断書作成の医療機関と初診時の医療機関が異なるときは、「受診状況等証明書(初診日証明)」の提出が求められています。

それというのも初診日に加入していた制度で「障害基礎年金」か「障害厚生年金」かが決まるからですが、遡及請求の時など、廃院やカルテの処分により、初診日の証明を得ることが困難な場合があります。その時は「受診状況等証明書を添付できない申立書」に診察券や領収書等の参考資料を添えて、初診日を申し立てることになります。

まず、20歳以降に初診日がある場合は、次の書類を提出します。

(1)第三者証明2通と参考資料

または(2)初診日頃に受診していた医療機関の医療従事者による第三者証明1通

第三者証明とは、請求者の友人・知人など3親等内の親族以外の方が、初診日頃の状況を直接見て認識していたことや請求者や家族から、聞いていたことを記入した申請書であって、複数の方により作成された2通が必要です。

それに、添付する参考資料の例としては、診察券や領収書以外に、生命保険・労災保険の給付申請時の診断書、障害者手帳申請時の診断書などがあります。他にも、医療情報サマリー(入院・外来患者の診療経過)や健康保険協会や健康保険組合から開示請求で取り寄せた給付記録(レセプト含む) などがあります。 なお、当時の担当医師や看護師等医療機関の医療従事者による第三者証明であれば、参考資料を添えず、1通だけで十分です。

次に、20歳前に初診日があるときは、先の1と2に加え特例として、2番目以降に受診した医療機関が作成した「受診状況証明書」や「診断書」の記載内容で、明らかに障害認定日が20歳到達以前であることが確認できて、その受診日の前に厚生年金の加入期間がないときは、1番目の医療機関の証明の提出を省略することが可能です。

その他、第三者証明ではなく、初診日がある一定期間の「始期と終期」を示す書類を提出し、初診日を申立てることもできます。具体的には「受診状況等証明書を添付できない申立書」と「始期」の例として、就職時の健康診断書や発病していないことが確認できる人間ドックの結果など、「終期」の例として、 2番目以降に受診した医療機関の証明や交付日の記載された障害者手帳などを提出します。それにより、初診日が一定期間内にあることが確認され、その期間のいずれの時点でも納付要件を満たしているなどの条件を満たせば、請求者の申立ての日が初診日と認められます。

初診日の証明が取れない時でも、第三者証明や初診日が存在する期間の証明及び客観的な参考資料等の提出により、初診日の審査が行われています。様式等詳細は日本年金機構のホームページをご参照ください。

(ひるた・よしこ:社会保険労務士、FP技能士2級、DCプランナー2級、年金アドバイザー2級、 2009年12月、東京社会保険事務局を退職。街角の年金相談センターの相談員として年金相談業務に従事する傍ら、わかりやすい年金の事務手続き等のセミナーや専門誌等への執筆活動を行っている。)

2021.4.2UP

障害年金の障害等級を認定する日(障害認定日)は、国年法第三十条・厚年法第四十七条により、「初診日から1年6か月を経過した日」とされていますが、同条では、「初診日より1年6か月の期間内にその傷病が治った(その傷病が固定し治療の効果が期待できない状態に至った日を含む)ときはその日」としても定めています。

具体例には、①器質的欠損若しくは変形又は機能障害を残している切断日や人工関節の挿入置換日等の場合、または②その症状が安定し、長期にわたってその疾病の固定性が認められ、医療効果が期待し得ない状態に至った人工透析等の場合があります。

脳血管疾患の認定日については、平成24年9月に、「障害認定基準 第9節/神経系統の障害 神経系統の障害による障害の程度」で改正されています。(以下抜粋)

脳の器質障害については、神経障害と精神障害を区別して考えることは、その多岐にわたる臨床症状から不能であり、原則としてそれらの諸症状を総合し、全体像から総合的に判断して認定する。(中略) 神経系の障害により次のいずれかの状態を呈している場合は、原則として初診日から起算して 1 年 6か月を経過した日以前であっても障害認定日として取り扱う。 ア 脳血管障害により機能障害を残しているときは、初診日から 6か月経過した日以後に、医学的観点から、それ以上の機能回復がほとんど望めないと認められるとき。

これにより、6か月経過すれば、神経系の障害での障害年金の請求が可能ですが、無条件で認められるものではなく、審査の上、固定と認められなければ1年6ヶ月を経過してからの請求となります。 6ヶ月固定での請求は、肢体の診断書で「治った日の欄」及び「予後の欄」に、症状固定の日付や、機能回復訓練(リハビリ)の終了等の記載内容により審査されます。

高次脳機能障害を併発していても、精神の診断書では、症状固定と認められません。そのため、6か月固定での請求で、肢体の等級が2級以下で認定された時は、1年6ヶ月経過した時に、精神の診断書と額改定の請求をすることになります。

(ひるた・よしこ:社会保険労務士、FP技能士2級、DCプランナー2級、年金アドバイザー2級、 2009年12月、東京社会保険事務局を退職。街角の年金相談センターの相談員として年金相談業務に従事する傍ら、わかりやすい年金の事務手続き等のセミナーや専門誌等への執筆活動を行っている。)

2021.3.29UP

被保険者期間が1年以上ある被保険者が資格喪失後6カ月以内に出産した場合には、「出産育児一時金」という長い名称の給付が出生児数に応じて支給される。

私が健保の役員時代、既に他の健康保険から給付を受けていた場合に、不支給にすべき根拠についてよく質問を受けたが、法令上の明確な規定は見つからない。

健康保険法上の歴史的経過は省くとして、出産育児一時金【注1】は、以前「分娩費」と「育児手当金」とに分かれていて、死産(流産【注2】)のときには育児をしないから育児手当金は支給されなかった。また、分娩費は標準報酬月額の1ヵ月分であった。そのため、資格喪失後の分娩費の額が多い人は、配偶者分娩費と本人分娩費のうち有利な給付【注3】を選択して受給することが普通であった。

皆保険が進み、国民健康保険制度の充実で傷病手当金、出産手当金を除けば、資格喪失後の保険給付の存在意義が薄れている。むしろ、保険者間の調整事務【注4】や法令上の根拠を被保険者に説明する手間を考えれば、次期改正時に改正して頂きたいものだ。古い話で恐縮だが、私が全総協【注5】の医療対策委員だったとき、この改正と併せて名称を「出産費」としてほしいと、厚生労働省に要望してきたがいまだに改善されていない。

ところで、冒頭の質問の回答であるが、「一つの保険事故で二つの保険給付を受けられない。保険者が異なっていても重複して給付を受けることは公序良俗に反する。」という訳だが、皆さんがにわかに納得してくれると有り難い。

コロナ禍で子供を産むことが命がけになっている昨今、民間病院で出産した場合は法定給付の一時金だけでは出産費用をすべて賄えないのが実情だ。政府は少子化対策で不妊治療の保険適用を決めたが、もっと優先的に改善すべき事項があるのではと思う。

【注1】国及び地方の各共済組合法による一時金は「出産費」という判りやすい表現である。

【注2】日本産科婦人科学会は、妊娠22週(6カ月)より前に妊娠が終わることを流産(12週未満は早期流産、12週以降22週未満を後期流産)、そして22週以降を死産としている。なお、出産育児一時金は妊娠12週(84日)を超えて出産(死産を含む)した場合を対象としている。

【注3】出産育児一時金及び埋葬料に係る喪失後の給付にも付加給付がある健康保険組合の場合は有利な保険者の給付を選択する場合があるので調整が煩わしくなる。また、直接支払制度が導入されたことで、元の健康保険組合から付加給付だけ受けたいという人もいて、担当者を悩ませる。

【注4】日雇特例被保険者として同一の給付を受けている場合はその額の範囲内で家族出産育児一時金は支給されない(法54条)、また、資格喪失後の給付は船員保険の被保険者となったときは船員保険が優先するので健康保険からは支給されない(法107条)。

【注5】全国総合健康保険組合協議会の略

(ひろべ・まさよし:元健康保険組合常務理事。現在は健保連神奈川連合会、柔道整復療養費相談会・相談員)

2021.3.1UP

日本年金機構におけるマイナンバーの利用について

平成28年11月に「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律附則第三条の二の政令で定める日を定める政令」が公布・施行され、日本年金機構でも、マイナンバーと基礎年金番号を紐付けて、国民年金や年金給付等の手続きが行われています。

平成30年3月5日からは、マイナンバーの利用で、日本年金機構へ被保険者や受給者の氏名変更届や住所変更届及び死亡届が原則不要となりました。遺族年金の受給者の氏名変更の理由が「婚姻」や「養子縁組(直系血族または直系姻族の養子となった場合を除く)」の場合、遺族年金が受けられません。その時は「遺族年金失権届」、それ以外の理由の場合は「遺族年金受給権者氏名変更理由届」の提出が必要です。

令和元年7月1日からは、マイナンバーによる行政機関間の情報連携の仕組みを活用し、従来、年金請求の際に生計同一・維持の確認のため戸籍謄本、住民票、所得証明書を提出する必要がありましたが、住民票と所得証明書の添付を省略できるようになりました。ただし、戸籍謄本は、情報連携の対象外のため、引き続き提出が求められます。

また、情報連携で確認できる住民票は平成29年4月1日以降、課税・非課税証明は平成29年度以降のものとなります。遡及請求で平成29年4月1日以前の状況を確認する必要がある場合などは、従来通り住民票や戸籍の附票などの提出が求められます。

情報連携を活用した具体的な請求手続きについて

特別支給の老齢厚生年金(加給年金か振替加算が有り)を請求する時、戸籍の謄本・抄本と振込口座の通帳の写を添付すれば、住民票と所得の証明の添付を省略できます。雇用保険も情報連携の対象ですが、未だ被保険者証等の写が求められています。

未支給年金の請求時は、届書にマイナンバーを記入して、死亡者と請求者が同居なら、戸籍謄本・抄本と振込口座の通帳の写しで手続きできます。別居であれば「生計同一関係に関する申立書」を追加します。

なお、詳細な必要書類は、年金事務所に相談の予約をする際に確認できます。

(ひるた・よしこ:社会保険労務士、FP技能士2級、DCプランナー2級、年金アドバイザー2級、 2009年12月、東京社会保険事務局を退職。街角の年金相談センターの相談員として年金相談業務に従事する傍ら、わかりやすい年金の事務手続き等のセミナーや専門誌等への執筆活動を行っている。)

2021.2.15UP

厚生年金保険の被保険者が業務上の理由で障害の状態になった時、障害厚生年金等と労災年金の両方が支給されますが、障害厚生年金等が全額支給され、労災年金が一定の率で減額支給となります。労災年金の調整率は、障害厚生年金等の給付のよって異なります。(表参照)

労災保険では障害等級の第1級~7級は年金として、第8級~14級は一時金として支給されます。労災保険の障害(補償)一時金は、併給調整の対象にはなりません。

障害厚生年金では、1級~2級は障害基礎年金と障害厚生年金、3級は障害厚生年金のみ支給されます。調整された労災年金の額と厚生年金等の額の合計が、調整前の労災年金の額より低くならないように配慮されていて、労働福祉事業の障害(傷病)特別支給金も減額されません。

労災年金と厚生年金等の調整率
労災年金 障害補償年金
社会保険の種類 併給される年金給付 障害年金
厚生年金及び国民年金 障害厚生年金及び障害基礎年金 0.73
厚生年金 障害厚生年金 0.83
国民年金 障害基礎年金 0.88
65歳前 特別支給の老齢厚生年金受給者の場合

労災の障害補償年金と障害厚生年金(3級以上)の受給者でかつ、特別支給の老齢厚生年金の受給者が、65際未満で退職し「障害者特例」に該当すると、報酬比例部分に加え、定額部分と加給年金(厚生年金期間が20年以上あり65歳未満の生計を維持している配偶者がいる)が支給されます。障害厚生年金でなく障害者特例(老齢年金)の給付を選択すれば、労災の障害補償年金は減額されず全額支給されます。

65歳以上の老齢厚生年金受給者の場合

労災の障害補償年金と障害厚生年金(2級以上)の受給者でかつ老齢厚生年金受給者の65歳以降の年金の方法には、1 障害厚生年金と障害年基礎年金、2 老齢厚生年金と老齢基礎年金、3 老齢厚生年金と障害基礎年金の3通りの組合せがあります。障害厚生年金等の選択方法により労災の調整率が1は0.73、2は調整なしで全額支給、3は0.88となります。

(ひるた・よしこ:社会保険労務士、FP技能士2級、DCプランナー2級、年金アドバイザー2級、 2009年12月、東京社会保険事務局を退職。街角の年金相談センターの相談員として年金相談業務に従事する傍ら、わかりやすい年金の事務手続き等のセミナーや専門誌等への執筆活動を行っている。)

2021.1.12UP

会社を辞めてしまった方の傷病手当金はもう仕事がないにもかかわらず、従前の業務を基準に労務の可否を判断するのはおかしいのではないかという質問をよく受ける。

平成19年4月改正前は、任意継続被保険者中に発病した傷病も傷病手当金の対象となっており、その場合は退職前の業務ではなく、一般的な労務に従事できる場合は傷病手当金を支給しないとしていた。しかし、会社に迷惑を掛けてはいけないと考え、就業規則では退職の必要がないのに自己都合退職する場合もある。

傷病手当金は、「療養のため引き続き勤務に服することができない場合」に支給するのが趣旨であり、必ずしも医学的に労務不能を条件としていない。就労能力があっても歩行困難や通院のため出社できない場合でも対象になる。

他方、国家公務員共済組合の運用方針では、資格喪失後の傷病手当金について、「労働能力がある場合には、「傷病のため勤務に服することができない場合」に該当せず、従って自家営業を行っている場合、事業所に雇用されている場合、勤務することができる状態にありながら、適当な職がないために勤務しない場合等には、組合員資格喪失後の傷病手当金は支給できないものと解される。」となっているが、健康保険法においても同様の解釈が成り立つ。しかし、地方公務員等共済組合の運用方針では、前記の他に、「退職後に継続して支給する傷病手当金は、病気又は負傷のため就労能力を失っている場合に限り支給する。」となっている。(就労不能の判断は医師の意見を確認)

健康保険法では、特に厚生労働省から通知がだされていないが、拡大解釈すると入院中か障害の状態にある場合に限るとも読める。会社に忖度して退職したため、退職日まで支給されていた傷病手当金が翌日から支給されない事態が生じる。

令和4年10月から非常勤公務員の共済組合(短期給付)への加入が施行される予定だが、いままで「協会けんぽ」に加入していた不安定な身分の職員が病気退職後に受ける傷病手当金の支給要件が現行より厳しくなるようで気になるところだ。

(ひろべ・まさよし:元健康保険組合常務理事。現在は健保連神奈川連合会、柔道整復療養費相談会・相談員)

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